自粛の曖昧さを乗り越えるために

自宅ごもりが続く中、日本のインドと言われる私の大好きな東京の街、高円寺の友達から連絡があった。

彼と話して、私もいろいろすっきりした。

それは何かというと「自粛」の正体。

それと、自粛という魍魎のような曖昧なものにやられないために必要なのは、明確な指標だと思ったので、「不要不急の場合以外、自宅にいること」の中身、すなわち具体的に何をしても良くて良くないのかという指針の日本語訳を書くことにした。

参考にしたのはペンシルベニア州のもの。

まとまっていて分かりやすかったので。こちらのサイトです。

https://www.pa.gov/guides/responding-to-covid-19/#StayatHomeOrder

参考にはなったらいいな。

何より、一から全て自分の頭で考えるのはしんどい。

 

では、ペンシルベニア州のSTAY HOME ORDER (お家にいよう命令)を載せていく。

期限さえもトップから公表されない恐ろしい「自粛」の自己判断疲れやバーンアウトなんかの助けになればと思っている。

ざっくりと訳していく。

 

(以下私のへたな翻訳ですがどうぞ)

(目的)

絶対必要な行動と、延命のための仕事と、行政の仕事以外は家にいること

 

(個人)

・自分個人、もしくは家族や暮らしをともにするメンバーの健康と安全を守るための必要なタスク(ペット等も含む)。例えば、薬や医療品の入手、プロの医療関係者を訪問すること、在宅ワークのために必要なものの入手。

・自分個人、もしくは家族や暮らしをともにするメンバーにとって必要なサービス、品物を入手、または配達してもらうこと。例えば、食品、家庭用品/日用品、ペットフード、そのほか安全・満足・生活をまわすのにに必要なもの。これには、食事や生存に関わるボランティアワークも含まれる。

・ソーシャルディスタンスを保つ限りにおいて、散歩、ハイキング、ジョギングなど屋外での活動をすること。(ソーシャルディスタンス:1.8メートルの物理的距離を他者との間にあけること)

・人命存続のため不可欠な物資やサービスにかかる仕事をすること

・他の家族のメンバー、ペットのケア

 

(不可欠な移動)

・上記に記した必要を満たすための移動

・高齢者、未成年、扶養家族、障がい者等 のような脆弱性の高い人をケアするための移動

・遠隔教育のための教材や、学校給食やそれに関連するサービスを受け取るために教育関連施設への移動、またはその施設からの移動

・管轄外から居住地へ戻るための移動(この「管轄外」というのが具体的に何なのかちょっと分からなかった)

・司法要請や裁判所命令による移動

・当州非居住者に対する、彼らの州外居住地域への帰還要請

 

(翻訳ここまで)

 

ここに、日本政府が使う”普及不要”とは何を指すのかのヒントがあると思う。

「満足:satisfaction」という単語が入っているのが印象的。

こういうときって、「贅沢は敵だ!」みたいな感覚があって、

最低限のギリギリや我慢をしてしまいそうになるから、ちょっとほっとした。

何かまた訳していきたいと思います。

 

ちなみに冒頭の友人からの連絡の内容は、

日本もコロナやばいと思うから、どうしたら良いか、ニューヨークで面白い動きがあるのかなどを知りたいという内容で、世界中にいる彼の友達に聞いているとこのこと。彼は困ったことがあるといつもこうやって、友人たちとそのコミュニティの解決方法を聞いて回っている。

彼と話すといつも元気になる。

彼の周りにいつも人がいて、ワイワイしてるのも分かる。

 

自粛の正体。 

日本にいて、何かが危機的な状況になったり、非常事態になると、政府から「自粛」が要請されたり、自然にか、メディアの情報も効いてか、「自粛ムード」になる。「ムード」だよ。雰囲気ってこと?空気感ってこと?人によって差があるだろうし、真面目だし、キツイ状況で相互監視的になる日本人のコミュニティでは、どんどん自分たちで首を絞めるようなことが起きる。だから、「自粛」でかなり制限が効くのだ。

だから、政治家も使う。

この時期だと、花見、祭りの自粛。

このコロナの状況の東京などでは、「数人以上での会食」を避け、「不要不急の外出を控える」ようにという自粛要請がなされた。いちおう、週末のみということらしい。曖昧だよね。

 

辞書を引きますと、

自粛・・・自ら進んで、行いや態度を慎むこと。

さらに、

慎む・・・やまちや軽はずみなことがないように気をつける。慎重に事をなす。度をすごさないようにする。控えめにする。節制する。

(上記2つ出典:デジタル大辞泉

という訳ですね。

 

う〜〜ん。

何をどこまでやっても良いのか、やってはいけないのか全く分からない。

 

これも調べてみよう。

不要不急・・・重要ではなく、急ぎでもないこと。

(出典:実用日本語表現辞典)

 

ということ。

何が重要で、何が急ぎかは個人の判断に委ねられまくっている。

人によっては、

同窓会なども含め旧友に会うことも重要だろうし、

結婚式のために、美容室に行きたいというのも重要だろう。

では、

立ち会い出産のために里帰りしている奥さんや病院を訪ねるのは?

すでにこの状況下で経営が難しくなっている近隣の飲食店で応援も兼ねて会食するのは?

高齢者施設で暮らす家族に面会に行くことは?

リモートでできない仕事は?

 

分からん。

 

お花見や飲み会の楽しいことが、自粛のイメージや批判の矛先にあがりがちだが、

健康で文化的な最低限度の生活を営むためには、

楽しいことも、お酒も、交流も大事なことだ。精神衛生にも良い。

私も今、東京を離れたダメージを受けていると思う。

こういう時は、あのスペース、この店、この店と頼りになる人たちを訪ねて回り、知恵を交換するのが私の生き方だった。

 

きっと、この自粛要請の中で、多くの人が頭を悩ませたり、怒ったりしたんじゃないだろうか。怒りのやりどころがないと思った方、その対象は政府だと私は思う。

 

自粛の怖いのは、本当に自分が罹患したり死ぬことになっても、「自分の判断でそうしたんでしょ」と個人の責任なってしまうことだ。政府は言い逃れがどれだけでもできる。

おまけに自粛で縮小してしまった経済分の補填はしたくないようだ。

社会福祉に使うと言って上げた消費税、今、使い時じゃないかなあと思う。

国家予算の流動のさせかたとか知らないのですけど、

桜を見る会2020の予算とか使えないんですかね。

どうですかね。

店や企業や団体を救うためのクラウドファンディングをちらほら見るけど、

クラウドファンディングだって個人のお財布が財源の元だから、

国民の良心に依拠していると思うんです。

そういうの(企業等への救済措置)だって国家の仕事として捉えても良いと思うんですよね。

 

自粛自粛と言って、情報を的確に得ることが難しい個人(市民)に判断を委ねるのは、良いリーダーのすることではないと思うな〜〜〜。頭の良い手じゃない。

悪手ではあるが、ずる賢いので、彼ら自身の保身にだけはなるという。

国家の役割のひとつは、福祉や教育、様々な形による富の再分配と調整機能だから。

 

また米国の指標や目安になりそうなことを訳したりしたいと思います。

リクエストある方は教えてください。

サイトまるごとグーグル翻訳にかけて読むってのも私の訳より正確かもしれません。

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近所の教会。今は、礼拝ですら行われていない。

 

 

近所で面白いこと(コロナ隔離生活を健やかに過ごしてみる)

ほら、コロナとかで腐りそうになるじゃないですか。

ニューヨークも事態がどんどん変わって、ちょっと気が塞ぐ。

レストランやカフェなんかもデリバリーやテイクアウトのみの営業になったから、店内の椅子を取っ払ったりしている。デリバリーだけだから店内の照明も消えてる。

ちょっと前、近所の薬局は、トイレットペーパーが無かった。今はまたある。

いつものネットスーパーは配達予約が取れなくなった。

いつも食べているチョコレートのシリアルが切れてしまった。

ちょっとちょっとのことで、本当にストレスが溜まっていくのだ。

311と原発爆発(直)後を思い出している人も多いと思う。

いつもと違うんだっていうことそのものが、気を塞ぐ。

いつもだったら楽しみをくれる施設も閉まってる。

図書館、劇場、遊園地、博物館、美術館。

おうちばっかりも疲れるし、

今度は、緊急事態のニューヨークでも散歩やジョギングでの外出はできるから、近所をもうちょっと面白がってみたいと思う。とは言え、もう、2020年3月10日頃から公園以外にはほとんど行っていない。

 

1.とは言え春は来るので木々の新芽がきれい(街路と公園)

2.ハクモクレンがきれい(公園)

3.水仙がきれい(公園)

4.クロッカスがきれい(公園)

5.菫がきれい(公園)

6.カラーがきれい(これは店先、カラーはなんかおもしろいし好き)

7.ドッグパークを眺める(みんな自由そうだ)

8.ランニングする人のフォームを眺める(癖は色々)

9.街角の貼り紙1(紙の下1/3くらいが電話番号が書いてある冊になってるやつ。ピアノ教えます、太極拳教室、論文の書き方と数学を教えます、1人利用のアパートの空き部屋あります、空手教室、ギター教えます)

10.街角の貼り紙2(犬もらってくれる人いませんか。探し犬。どちらも家族と会えますように)

11.10℃超えるとやたら薄着の人たちを眺める(季節感よりも体感温度が大事。好きなもの着よう)

12.桜もきれい(公園と街路樹)

13.鳥も地鳴きからさえずりになりました(冬の間、鳥はさえずらない)

14.街角に欲しいゴミが落ちてる。鏡やテーブルや椅子。カウチ。(今は拾わない)

15.アパートメントのコインランドリーから香る洗濯物の匂いが好き(昔からある飾らないバウンサーみたいな匂い)

16.親子でモーター付きキックボードに乗ってんな(早い)

17.ピクニックする人(ひなたぼっこいいよね)

18.ハドソン川きれいだな

19.ハドソン川に反射する春の光がきれいだな

20.ハドソン川の向こうのニュージャージーもきれいだな

21.飛行機飛んでるな(人が移動してんな)

22.中二階があるネイルサロン発見

21.ビーグルが嫌がってるな

22.スーパーの果物がきれい

23.薬局が季節もののプレゼントを売り出す(今はイースター。ちょっと前はバレンタイン)

24.DIG INNの前はいつもいい匂い(サラダ屋)

25.バーに「カクテルのテイクアウトできるよ」の雑な看板(路上での飲酒が法律上禁止されているため、お酒のプラカップなどでのテイクアウトも禁止されているが、コロナの影響でオッケーになった。やっぱり路上で飲むしかない。という高円寺のノリにのってみる)

26.角のチュロス屋台のおばちゃんまた来ないかな(めちゃくちゃうまい。けど、法律で無許可の屋台は禁止だから、うまいことたまにしか来ない。屋台を取り締まらないでほしい)

27.教会の鐘の音

28.アパートメントの装飾の間に鳥が営巣

29.ベビージョガー押しながらジョギング

30.この落ちてる木の実何?(調べはしない)

31.梅とかボケとかそういうのも咲いてる(何これ。木は詳しくない)

32.最近増えてるダサいタグを観察。タグの主も行くところがないのかな。

33.目の前の犬が左に曲がったからここ曲がってみよう

34.ここを下るとハーレム

35.地下鉄の通気孔を覗く子ども

36.ボール遊びする子ども

37.フリスビー遊びする子ども

38.滑り台で遊ぶ子ども

39.ブランコで遊ぶ子ども

40.ユニコーンのカチューシャの子ども

41.あたたかそうなジャケットの犬

42.本当にこのカフェなくなったんだ(いつも人で溢れてたんだけどな)

43.犬のうんこを踏まないようにいつも気をつけていないと本当に踏む

44.やったらおしゃれな人(まれ)

45.あのデリの前のベンチにいる猫を「主様」って読んでる

46.街角の貼り紙3(そのデリの隣のゲームバーには「主様」を入れないでっていう貼り紙)

47.ミラノ(という惣菜と食品とスイーツの店)のパンはここで焼いているんだろうか

48.突然恋しい居酒屋小料理を羅列してみるとウケる(ホタルイカの沖漬け、菜の花の辛子和え、チキン南蛮、梅水晶、鳥の唐揚げ、だし巻き卵、しらすおろし、サバの塩焼き、ホッケの開き、マカロニサラダカレー粉入、アスパラベーコン・・・まだあるだろう)

49.近所のアパートメントの入り口付近にある冷戦時代の「原子力シェルター」の看板

50.モロッコの料理美味しかったな~(思い出。朝食のモロッコ風パンケーキとか、モロッコティーとか、オリーブとか、魚やエビのフライとか、魚のグリルとか)

51.道がボコボコ(舗装工事とかめったにやらないんだろうなあ)

52.近所の友達と偶然会ってほんのちょっと立ち話(ちょっとコロナのこととか愚痴る。これ以来本当に友人たちと会っていない。)

53.黄色いスクールバスは朝7時50分に来てたなあ

54.市立図書館のいつも半袖にストールの司書さん、今なにしてるんかな

55.郊外に行く路線バスに乗ってみたい

56.スピーカーから音楽を流して歩く人いいよね(わりといる)

57.ファーマーズマーケットのコーヒー屋。「今日はダークロースト売り切れだよ」(買う人がいっぱいいてよかった「じゃあ中煎りください」)

58.あからさまにジェントリフィケーションのそこだけきれいなワンブロック

59.どこかのマンションの10階くらいからめっちゃ犬の鳴き声する

60.柳だ

61.池には亀もいる

62.動物にもれなくアテレコする

63.露天の古本屋を覗く(品揃えと価格を比べると、ミラノの前のおいちゃんが一番。そう結構、露天の古本屋はいる。レコードなんかも置いてあったりする)

64.市営(とおぼしき)デジタルサイネージには犬の里親募集の掲示

65.お。ドラマシューティングの車じゃん(来たばかりの頃の思い出)

66.あれに、エイミーいたらどうしよう(テレビドラマ、brookryn 99が大好き)

67.三寒四温とかそういう言葉はないのだろうか

68.傘をさすひとが少ないな

69.本当に見事に人が減ったな

70.桜満開ですね〜〜〜〜〜

71.気分だけは花見!

72.あれ、こんな道あったっけ

73.音楽カレッジだ〜!

74.お、日本語の幼稚園発見。へえ〜

 

歩くと何かが目に入ったり、見たり、観察したり、嗅いだり、何か思考したり、連鎖して思い出してふふふとなったり、、、すべてが面白い。

オススメです。

 

quarantine life (隔離生活)、安全に気をつけて楽しみます。 

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白っぽい桜もあるね。ブロードウェイ・ストリートの脇。



 

 

 

コロナ状況アップデート@ニューヨーク

ちょっとLINEやmessengerを放っておいたら、たくさんの心配メールが来ていました。みなさん、ご心配掛けしています。ありがとうございます。ありがたいですね。米国国内から、そして国境を超えて。

みなさん、私は無事です。無事。

私も週末から一昨日まで、3.11後のような虚脱感、無力感、恐怖、無気力に襲われていましたが、今は、大丈夫。

 

結構、ニューヨークのことがセンセーショナルに報道されているのですよね。

だから、ドドドッとたくさんメッセージを頂いたのだと思います。

私も少しSNSで見ました。

空っぽのタイムズスクエア、地下鉄。ショッキングですよね。 

しかし、これらのショッキングな映像は、行政の命を最優先にした迅速な判断と、それに応えた企業や団体、個人事業主の努力の結果だと考えています。

具体的にどんな行政命令が出たかと言うと、近々のものを以下に引用します。

 

◎(NY州)在宅勤務義務付け・自宅待機要請(行政命令No. 202.8)
・3月22日から,クオモNY州知事が発出した、必要不可欠な業種を除く全ての事業体及び非営利団体は可能な限り在宅勤務を活用し,雇用主は原則として業務現場で勤務する人員を100%削減することを命じた行政命令が発効し、4月19日まで有効となっています。また、同知事は、州民は可能な限り自宅待機を行い、不要不急な公共交通機関の使用を控えること等を連日要請しています。
・つきましては,NY州に在住・滞在の皆様は,不要不急の外出を控え,ご自宅・滞在先での待機をお願いいたします。
・同州知事発表の行政命令及び要請の概要は以下のとおりです。
-州民サービスに必要不可欠な機能に従事する者以外の全ての労働者は在宅勤務とする。
-レストラン(持ち帰り・宅配のみ),食料品店,薬局,医療機関,ガソリンスタンド,ドライクリーニング,郵便局,公共交通機関などの必要機関・店舗の営業は継続する。
-緊急ではない限り,(同居していない)家族や友人と会うのはどのような規模であっても控える。
-自宅に留まり,戸外の活動を真に必要な活動に限る。
-必要不可欠な食料品等の買い物は可能とする。
-屋外の散歩や自然の中で運動はできるが,基本的には単独行動で,他の人から6フィート(約1.8m)の距離を保つ。
-公共交通機関をできる限り使わない。
(出典:在ニューヨーク日本国総領事館メールニュース2020年3月26日)

 

しかし、これだけやっても、コロナウイルスは拡散しているわけです。世界に冠たるニューヨークでさえ、経済をかなぐり捨てて人命を最優先に動こうとしているように見えます。

 

さらに、3月25日にはニューヨーク州クオモ知事の発表は、

・NY州での感染者数は3万人を超え感染は拡大しているが、入院患者数の増加率は少しずつ鈍化している。NY州の感染者数のピークはこれから2週間から3週間後を想定。これに対応するためにベッド数、人工呼吸器、医療スタッフを含め医療対応体制の拡充を図っている。
メンタルヘルスに対応するため、6000人以上のボランティアの専門家が対応するホットラインを立ち上げた(1-844-863-9314 ※英語)。

(出典:在ニューヨーク日本国総領事館メールニュース2020年3月26日)

 

メンタルヘルスにも言及してて、いいぞいいぞと思います。

ちなみにもっと早い段階で、コロナにかかる検査費・治療費を無料にすることと、それに関して移民差別をしない、どんな保険に加入しているかも問わないということも決まっています。(運用はどうなるか観察しないとだけど)。

がんばれ!税金の使いどころだよ!

個人的には、あとは虐待(DV)ホットラインも必要かなと思います。お家でこもってると、絶対ストレスが貯まるから、暴力が発生する可能性が高まる。

 

ここには書かれていませんが、ミッドタウン(中心街)のホテルを病床として開放するなどの対応も始まっていて、引き続き病床数を増やすためにホテルと交渉している。呼吸器2万6000個(だったかな)を手配するよう国と交渉していたり(国からの支給は4000個。全然足りない)。

国民に対して一人あたり最低でも1000ドルの給付金を現金で支給を決定したり。

「家賃が支払われなくても住民を追い出さないように」というアナウンスも市長(州知事だったかな?)からされた。

 

いずれも一貫して、迅速な対応だったと思う。

それでもこれだけ広がった。2周間前は「手を洗って気をつけましょう」くらいだったのが、今では異世界。率直な感想としては、あんなに州と市が対応して、ソッコーで街がガラガラになるような反応を市民が見せても、それでも、世界で一番罹患者数を打ち出すのか、です。いわんや、日本の対策をや、という気分です。

 

とは言え、家賃対策、失業者対策、まだまだ論点はいろいろある。

 

ここからは私の周りのことを少し。しかし、私も特殊な状況に暮らしていると思うので一般化はできないけれど。

 

コロンビア大学は閉鎖中(2日間休校、翌3日目より全学部学科オンライン講義を開始、のち、全学生に対して帰れる所がある人は帰宅要請、そのまま春休みに突入。今学期の成績は合格か不合格のみの評価(A、B、C、D、Fなどは無し)。卒業式は中止。図書館やジムなども開館時間の短縮を経て閉館。)

 

コロンビア大学は学生に対して、帰れる場所がある人は帰るようにと帰宅要請。これによって多くの学生が帰宅等した。(留学生、一部の院生などは残っている様子)

 

・スーパー営業中(ソーシャルディスタンスを守るために、入店人数を管理している。そのため屋外に並ぶ時間帯もある。品物は普段通りある。ショッキングなほど人が並んでるスーパーの画像とかもこれかもしれないから、気をつけて見てほしい)

 

・薬局営業中(普段からわりと棚がちらほら品薄。だから少々の品薄はビビらない。先々週はトイレットペーパーやティッシュが無いところもあったけど、今週は入荷している)

 

・バーやレストラン、カフェ(配達と持ち帰りのみ営業。法律で禁止されていたアルコールの持ち帰りも可に。私のお気に入りのカフェは「店員の健康を守るため」に営業中止、コーヒー豆販売などのオンラインストアのみ営業。)

 

・市長の宣言でお酒のテイクアウトに許可、ニューヨーク市内のみ(とは言え、路上での飲酒はできない。それでも、スプレーでざっと書いたような「カクテルテイクアウトできるよ!」「ビールテイクアウトできるよ!」のバナーをデカデカと近所のバーが掲げたのは良かった。まるでデモのバナーのよう。おしゃれな店舗とギャップがあるがそれもよし。近くのバーガーショップは、路面に面した窓を解放し、そこをカウンターのようにしてテイクアウトで食べ物やビールを売っている。ちょっとしたたまり場になってる様子)

 

・オンラインスーパー(デリバリー予約が3月頭から徐々に混みだし、今は品薄、デリバリーの予約が取れないところもある。ホールフーズはまだ動いている印象)

 

・アマゾンネットショッピング(普段とあまり変わらず使える。オンラインスーパーで買えない日用品も、定期便を指定すると在庫があるものもある)

 

・デリバリー業の人(は忙しそうだが、日が良くなって来たため、そこかしこにあるベンチでダベってたりする。陽のあたる場所大事。また各戸の玄関まで配達していたのが、今は、アパートメントの入り口までの配達になっている)

 

・公園にいる人は減。ソーシャルディスタンスという公衆衛生概念が手洗いと同じようにあって、近づいてはいけないというもの。それをみんな守りながら外を楽しんでいる様子。サッカーやバスケなどのスポーツはソーシャルディスタンスにより禁止されているため、各種コート類は無人。ジョギング、犬の散歩、散歩、距離を保って立ち話などなど。(Aさん「え!偶然じゃん元気~?」Bさん「わ!ハグしちゃいけないんだったね!」AさんBさん「めっちゃハグしたいのに!」というシーンに遭遇)

 

・マスクしている人は増えた。(私とパートナーは、ソーシャルディスタンスを守りながら散歩やジョギングでは着用せず。スーパーなどに行くときは着用)

 

・友達とは全く会っていない。最後に会ったのは、2020年3月7日。それ以来、路上でばったりというのが1回あっただけで集まってない。

 

こんな感じかな。私も外出は最低限にしているから「こうですよ!」とは言えいないし、印象です。

 

世界は今も変化しています。しかし、あのショッキングな映像は、怖いものではないのではないかと思うのです。人命を第一にして、自分が罹患している自覚がなくても、拡散源になる可能性を含めて対応しようと政府も一貫したメッセージを発信している。コロナ検査などにかかる医療費支援金を移民を含めて援助しているし、生活資金を配ろうとしている(足りないけど)。

少なくとも、日本と比べて機能している政府と政治、メディアというのを目の当たりにしてちょっと感動を覚えるくらいです。なので、まだ数字が出ていない日本も心配です。

 

この記事は、3月26日に書いたものにちょっと付け足しした感じのもので、翌27日にはまた対応が増えたり、状況が更新されています。また報告します~~。

 

 

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とは言え桜は満開。きれい。

 

京極夏彦『姑獲鳥の夏』

京極夏彦の本を読んだ。

二十歳頃初めて読んだ彼の著作『姑獲鳥の夏

 初めて読んだのは、講談社文庫、美しい表紙だった。

おんなのつるんとした感じが好きだった。妖怪なんだけど。

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 1998/09/14
  • メディア: 文庫
 

 

初めて読んだ時の登場人物の印象は、

中禅寺秋彦は怖くて人情味に欠ける人

関口巽先生は情けない人

榎木津礼二郎は変な人

木場修太郎は屈強な人

中禅寺敦子は溌剌とした人

久遠寺涼子はかわいそうな人

 

外れてはいないだろうが、人物の一面しか腑に落とせなかった。

登場人物の心の揺れについてゆけず、違和感をいだきながら、

人間の機微や情動は脇においておいて文字を目で追い、頁をめくったのだろう。

文字を追うこと自体に快楽があり、頁をめくることにも執着していた。

 

私は頭が悪かったというか。

脳みそも目も開いていなかった感じさえある。

それはそうだろう。

「厚い本を読みたい」というおばかさんな欲求で読んでいたのだから。

恥ずかしいことに、私の中には

頭がよくなりたい、ものを知りたいの隣に

頭がよく見られたい、驚かれたい、感心されたいという感情があって、

その感情の露出の仕方が「厚い本を読む」だったのだから。

ミヒャエル・エンデを何度も手に取り、

何度も挫折した小学生のときには既にこのことを考えていたのだ。

ほんとうにおばかさんである。

幼い子どもの浅い考えだった。

この浅知恵を成人してからも持っていたのだからなんとも言えない。

子どものときの欲求というのは恐ろしい。

人生を決めてしまうようなところがある。

社会的な愛(のようなもの)を求めるものである場合は特に。

 

それが直感と喜びを伴うものでなく、

どうやったら注目されるか、どうやったら愛されるか、

特別だと思ってもらえるか、褒めてもらえるか、

そういったものに執着していた。

80年代に生まれ、日本の田舎で育った子どもの社会など広いものではない。

どうやったら親から愛されるか、それだけだったように思う。

 

きっとそれは都会で生まれても、今この2020年に生まれても大差ないだろう。

 

今、あの頃を収斂させてしまうならば。

たぶん、褒められたのだろう。もしくは、褒められたと感じたのだろう。

厚い本を読んでいる姿を。

もしくは、その学年では読めないような本を読んでいる姿を。

 

本を読まない父親は、なぜか本だけは欲しいだけ買ってくれた。

 

転じて、今は、終わらないような厚い本を読むのも好きだ。文章量によってでしか、表せないことがある。物語が二転三転したり、専門書であれば事例が多く語られる、など。厚みはただの結果で意味はない。意味は無いのだ。

 

今、改めて読むと、印象がだいぶ変わった。やはり面白い本だった。

登場人物の情緒や機微も感じられたし、

中禅寺秋彦による脳科学や心理学や民俗学に関する語りも、分かる。

あのときの自分は何を読んだというのだろうと思うほどだ。

あまり分かっていなくても、

この本は面白いということだけは伝わっていたようだ。

たぶん。

 

少なくとも同時期に読んだデカルトよりは面白かった。

面白さの種類は似ている部分がある。

 

今読んだらデカルトも相当面白いかもしれない。

 

自分にとって彼の著作は、欲しいほどには無いこの頭で、

このように、粗雑な分析めいたことをしたくなる一冊でもあります。

 

脳みそがどんどん動いて面白いのでおすすめです。

 

おうちで面白いこと

 

ミュージカル映画サウンドオブミュージック」で、my favourite thingsという歌が出てくくるのですが、夜寝る時間、雷を怖がる子どもたちに主人公マリアが、「そんなときは好きなものを思い浮かべると、気分もそんなに悪いもんじゃなくなるよ」と歌うのです。

高校生の時、音楽の授業でこの映画を見て、なんてシンプルですてきな方法なんだろう!と思ったものです。

 

 


My Favorite Things from The Sound of Music

 

 

 

それを思い出して。

コロナとかでどうしてもおうちにいる時間が増えるじゃないですか。だから。

ひとりでおうちで面白がれること。面白がっていること。

みんなの面白いことはなんですか。また教えてください。

 

レッツ羅列。

 

1.小説を読む

2.ウィキペディアを読む

3.インターネットウィンドウショッピング

4.ゲーム

5.皿洗い

6.水回りの掃除

7.洗濯

8.洗濯物干し

9.ゴミ捨て

10.花の水やり

11.アマゾンフレッシュでお買い物(日々の食料を買います)

12.洗濯物を畳んで箪笥にしまう

13.料理

14.皿洗い

15.いろんな家事の間にくだらないラジオを聴く

16.ネットフリックスで料理のドキュメンタリー

17.ネットフリックスでネイチャードキュメンタリー

18.ネットフリックスで動物園のドキュメンタリー

19.ネットフリックスで水族館のドキュメンタリー

20.友達のツイッターのタイムラインを読む

21.手紙を書く

22.すてきな文章の書き写し(今は『雪国』川端康成

23.ブログを書く

24.ストレッチ

25.ヨガ

26.縫い物

27.パズル

28.お菓子作り(適当に作って失敗する)

29.レシピを見て料理に挑戦する

30.夕食のメニューを考える

31.最近キッチンの窓辺に来る鳩を見る(日本にはいない種類)

32.犬の鳴き声を聞く

33.グルーポンで安くなっているチケットなどを探す

34.気球に乗りたいな~で検索する

35.次読みたい本が図書館にあるか検索する

36.音楽を流す(chill hip hop)

37.次の作品を考える

38.コーヒーを淹れる(最近はフレンチプレスです)

39.水分摂取量を記録する(fitbitというアプリを使っています)

40.パートナーの書架を眺める

41.空気清浄機を止めて、良い香りのキャンドルを焚く。

42.窓の外の天気を眺める。

43.instagramで犬のアカウントを見る

44.ベットメイキングする

45.次にしたい仕事を考える

46.ドライフラワーを眺める

47.文通したいなあと思う(叶いました)

48.買い替えたい靴を調べる(リーボックのフリースタイル、ハイカット)

49.ローマ字ロゴの醤油や味噌を面白がる

50.Instagramメイク動画を見る

51.Instagramで育児漫画を読む

52.行ってみたい美容院を検索する

53.環境に優しい家庭周り品を調べる

54.Instagramでかっこいい刺青を見る

55.次入れたい刺青をぼんやり思う(数字が良いな)

56.脇の下(あばら)をさする(と肩の力が抜ける)

57.これやってると過去の楽しかったこととか、美味しかったものとか思い出す

58.なんかここ抜けてた

57.お向かいさんがパソコンに向かっているなと思う

58.ルームメイトが作る大きなハンバーガーが美味しそうだなと思う

59.高円寺と新宿の友達のSNSを見て、飲みに行きて~と思う

60.アメリカで最近流行りのチューハイ的なものを試す

61.ネイルを塗る

62.良い姿勢を取ろうとする

63.鏡を拭く

64.ステップの練習をする

65.ルポルタージュを読む

66.ヨガ

67.繕い物をする

68.壁に写真やらポスターやらポストカードやらを貼って飾る

69.アニメ「apple & onion」を見る

70.髪の毛を梳かしてまとめ直す

71.おうちに届いた小包や封書を開ける

72.アニメ「Steven Univers」を見る

 

また書こう。

これ、書いているだけで気持ちが上がってくることが分かりました。

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天才たちの落書きも好き(外だけど)。

 

 

 

銀行口座を開いた話

銀行口座を作った。外国籍人として住むと、やはり少し面倒だ。その国の国籍を持っていないとひと手間かかる。どの国でもきっとそうじゃないだろうか。こういう時、「日本だったら・・・(もう少し楽だったのに)」と口にしたくなるが、意識して避けてみている。大体、日本という主語が大雑把すぎるし、長年日本で暮らしてきた私は日本の仕組みに慣れているというだけで、日本の銀行が便利で優秀かと言われればそうでも無いと思うからだ。

 

作ろうとしたのは、ジョイントアカウントという種類の口座。1つの口座を複数の名義で作成でき、その人数分のクレジットカードができるというもの。私とパートナーは家計をシンプルに管理したいので、前からこのジョイントアカウントを作ろうと話していた。

日本で家計を管理していたときは、できるだけシンプルにしたけれど、給与振込などを考えるとやはりひとつにまとめるということはできなかった。私は数字と算数に弱いので、家計がひとつにまとまることはとてもありがたい。

 

まずは、パートナーが使っていたallyというインターネットバンクで作ろうと試した。手続きはパートナーがほとんどしてくれた。私は、ファイリングしてある書類の位置を教えたり、書類を出したりしただけ。いや、それすらしなかったかもしれない。

フィアンセビザ(k1ビザ)でグリーンカード無しという私の今の条件でも作成できた事例があるとパートナーが下調べした上で申請した。が、結果は口座開設ができなかった。電話で確認した後、書面が郵送で届いた。丁寧だな。残念。パートナーの忙しさを考えると、気がそぞろになった。

 

それではと、パートナーが知らべて決めたのは、カナダのTDという銀行だ。TDを選んだ理由は、私の今の条件でも口座を作ることができ、さらにお金持ちではない私たちにとって条件が優しく、と使い勝手が良かったから。

条件というのは例えば、米国の多くの銀行は、口座の預金額が一定限度を下回ると手数料を取るのだ。一定限度を上回ると、ではない、下回ると、だ。例えば、2500ドル(26万円くらい)を下回ると月額30ドル(3100円)ほどの手数料を取られる。26万円の残高を切る人の3000円は厳しいのだ。

こういった条件や手数料などが比較すると低額なのだ。ATMの使用料金も月末には全額返金されるし(1回3ドルくらいかかる)、預金金額が低くなっても、口座種類のダウングレード、アップグレードもすぐできて、手数料を最低限にすることができる。

 

支店も近所にあることから、早速、散歩がてら口座を作りに行った。

必要なものは、パートナーは本人確認書類ひとつ、私は本人確認書類ふたつ。共有のものとしては、結婚証明書の原本。簡単だ。

 

いつも行く薬局の横が銀行だった。ああ、ここ銀行だったのか、知らなかった。簡素でクリーンなオフィスだと思っていた。日本で生きてきた感じだと銀行っぽく感じていなかったからだろう。めっちゃBankって書いてあったのに目に入っていなかった。

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こんなワンフロア。TD銀行です。

 

受付デスクには犬用のおやつが置かれていた。かわいい。犬連れで来店する人が多いからだそうだ。奥には子供用のロリポップもツリーでカウンター脇にあって、なんとなくほんわかして安心した。なんとも気さくな雰囲気。

そうこうしていると、犬連れや、ふたり乗りベビーカーで来店する人がパラパラと来たので、微笑ましく思う。

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カロリーメイトくらいの大きさの犬用おやつ。

 

早速、デスクに通されて、ジョイントアカウントを作りたいという旨を告げる。

まずは、本人確認書類の確認から。

パートナーのパスポート、オッケー。

婚姻証明書、オッケー。

最後に私は、自分のパスポートとソーシャルセキュリティーナンバーを提出した。

(ソーシャルセキュリティーナンバーについては、他の記事にかきました)

gonna-dance.hatenablog.com

 

すると、顔写真がついたものでないといけないと言う。国際免許は置いてきてしまったし、どうしようととても不安になった。国際免許も持ってコレばよかった。こういう時に出直すのが嫌なのだ。これもある種の呪いなのだが「失敗した!」と自分を責める気持ちが湧く。自分でも過剰だと感じるほどの焦りがせり上がる。体温も上がる。

すると、パートナーが「大学のメンバーシップカードは?」と銀行員に聞いた。大丈夫らしい。これでいいの?確かに、これもパスポートを提出して作成したけどさ。公的機関が作成したものじゃなくて、図書館やジムの利用者証だよコレ。学生書ですらない。パートナーが所属する大学の、配偶者用のメンバーシップカード。

渡米して間もなくの疲れた顔の証明写真の私。

友達がアパートに残していったユニクロのグレーのダウンを着ている。

冴えない私自身が良い思い出だ。

戸惑いながら提出した。

駄目だったらどうしよう。

どうもない。帰って出直すだけなのだが、頭は呪いのせいで冷静ではない。

もちろん、オッケーだった。銀行員が両面確認して、さらりと手続きが進んだ。

なんか、簡単だな。良いんだ。

ちょっと心のなかで笑った。

 

重要な説明書や確認書類はすべて、オンラインだ。紙は1枚も渡されなかった。はじめにメールアドレスや電話番号などを登録し、そのアドレスにアクセスコードなどが携帯電話に届き、オンラインで書面を読み、サインをする。スマートフォンの画面に指でサインしたので、とてもブサイクだった。

簡単だ。

すべての契約書などは、銀行のアプリか、ウェブサイトにログインすれば見れるし、ダウンロードできる。

 

手続きの間、コンピュータ処理の間ができる。その切れ切れの間に少しずつ、銀行員の人と話した。彼も半年前に結婚したばかりだということ。リゾートに新婚旅行に行ったこと。「ハネムーンや式には行くのか?」と聞いてくれて、いろいろ話してくれた。家族だけの小さな式をしたこと。人や文化によっては500人規模の式もあり得るということ。「あの人を呼んだら、あの人も呼ばなきゃってなるんだよね。すると増えるのもわかる」という話は日本でもよく聞いたものだ。リゾートの思い出は人生で一番のものだということ。指にはシンプルな指輪がはめられていた。

 

その場でクレジットカード(キャッシュカードと一緒)が作られ、手渡された。早い。

今はクレジットカード、それより前は小切手の文化の国なので、小切手も少し渡されれる。小切手のつづりは後で郵送されるそうだ。

 

最後に小切手とATMの使い方を教えてもらった。

説明用に1セントが記載された小切手がそれぞれに渡される。裏にサインをし、ATMへ。自分のカードを挿入し、ピンコードを押す。その後に、小切手をATMに読み込ませて、自分の口座へ送金する。なんだか不思議な感じだった。

今はもう小切手はめったに使わないが、習慣はあるし、使っている人もいる。この前は、教会での献金を小切手でやっている人を見た。

 

習えてよかった。

その日は暖かかったので、天気の話をして銀行を出た。

 

一安心だが、

銀行の注意事項説明書が読めなかったこと、イマイチ銀行の仕組みが分からないことなど、日本語だったら読めるし聞けるしわかるのに、と焦りに似た苛立ちもあった。

 

でも知らなくて、分からなくて当然じゃないか。

15度ほどの暖かい日だった。日差しが気持ちいい。

 

こうして、知らないことを知っていくそのプロセスは不安にもなるが、もっと自分のなかの新しいことへのワクワクを育て直していきたいと思う。幼い頃は、知らないことに対してあまり怖がったりしなかった。むしろなんでもやってみたかった。怖いもの知らずの私を両親は恥ずかしがった。私は単純に知りたかったし、知らないボタンは押したかったし、できるようになると嬉しかった、もしくは出来なかったことはすぐに忘れた。

知らないことは恥だと思ったり、初めてやることを一度で覚えられないと自分を情けなく思ったり、できるようになっても「当然」という言葉がついて回って自分を褒めたり嬉しがることを忘れてしまったり、そんなつまらぬ怯えた心が育ってしまったようで。

 

大人になっても知らないこと、いいじゃないですか。

初めては多いほうが、多分楽しい。

そして知ったら、世界が広がる。

 

銀行口座、できました。レベルが20くらい上がった気分です。 

京極夏彦『ヒトでなし』(コロナの状況アップデート含む)

めちゃくちゃなタイトルで書き出したもんである。

 

学生の親近者にコロナウイルス罹患者が出たことを受け(学生ではない)、大学は2日休校ののちに、すべての授業を遠隔(オンライン)で開講し始めた。予防と早期対処が大事な感染症対策において、迅速で的確な処置のように思われる。

消毒液などは前からそこかしこに置いてあったが、構内には予防方法の張り紙が増えた。

休校初日には、正門があるブロードウェイストリートには何台も報道者が駆けつけていて、気が気でな買ったその日は暗い気持ちになった。

 

そんなわけで、大学図書館はガランとしている。いつも勉強する学生で溢れていたので少し寂しいが、安心する。

 

通っているコロンビア大学東アジア図書館(通称ケント図書館)には、日本語、中国語、韓国語といった東アジアの言語で書かれた書籍が多く所蔵されている。書籍も辞書や文学全集、画集もあるし、新聞や研究雑誌もある。私には全くわからないが、なにやら相当古そうな巻物と思しき書物もある。ドナルド・キーン教授を記念する銅版レリーフもある。小さなお稲荷さん(お狐様)の飾ってある棚なんかもあり、誰のコレクションなのだろうと思う。

ケント図書館には、現代の文学や小説もある。さすがに全巻とはいかないが、吉本ばなな桐野夏生村上春樹などは、代表作たちが英訳版と並んでいたりする。韓国語、中国語とともに日本語の本もあるその奥の深い本の森はいつもいろんな気持ちにさせられる。今回は京極夏彦を借りた。数冊しかない京極夏彦の棚に寂しさを覚えたが、あるだけありがたい。

 

 

私は京極夏彦ファンである。

 

きっかけは学部生時代に京極堂シリーズ『姑獲鳥の夏』を読んだこと。分厚い本を読むのが好きだった私は、兄の影響を受け彼に借りて読み、その後、ブワッと好きになった。

文章が絶対ページをまたがないとか、そういうギミックにも心を揺さぶられた。こういうの好きって私の中ではオタク感とか中二病感あるんですけど、どうですか。

 

今回読んだのは、『ヒトでなし』

すごいタイトルだ。嫌だし厭。いやすぎる。嫌。なんとなーく嫌な感じ。

以前読んだ『死ねばいいのに』よりいくぶんかはマシかもしれない。

4センチを超える厚みがあって、いいねと思った。

私は気分が悪くなるような暗い本を好んで読む性質があるので借りた。

 

仏教に興味のある人、おすすめです。

人間の人間らしいヒトでなしな部分と、非凡な人でなし(天才)が読みどころです。

 

子どもとの死別、離婚、失業、家なし、とひどい状況の主人公・尾田。

高級マンションに住むも、借金に追われる友人・荻野。

どん詰まりに思える二人から話は展開していく。

ある仏教の宗派がひとつの下敷きになっているので、後半の舞台は寺に移る。

尾田の言っていることは、全編576ページ、全く変わらない。

周囲の反応がどんどん変わっていき、コミュニケーションと人間関係が変わっていく。

周囲にとって尾田の存在はどんどん変わっていくのだが、尾田は変わらないから「お前ら何なんだ」となる。

 

尾田のような人間(ヒトでなしなんだけど)に憧れる気持ちがふっと湧く瞬間が何度もあり、憧れは湧いた時点で自分自身ではないので、自分は本当に凡人で人間臭いやつだなあと思う。

 

冒頭、街をさまよう尾田やコンビニにスウェットで出てくる荻野の姿を想像する時、私はなぜかいつも中野駅周辺を想像する。小説を読む面白さのひとつは映像を頭の中で構築することにある。

 

作中、人が殺されたり、自殺しようとしたりするのだが、「ああ。きっとそうだよね」と納得する。他人が納得するような「理由」が無いからだ。本人たちもその時も、その後もうまく説明できない。

私が本を読むのは、苦しみを抱えている人が何を考えどう思っているのか知りたい、という欲求がひとつあるからだ。そして私の脳みそが納得するのは、「分かんないよね」っていうことのようだ。火サスのような人も実際にはいるのかな、いるのだろう。これだって分からないだけで。

 

物語全般に渡って大体、厭なことや怖いことがどしどし起きて、嫌な気分なのだが、後半から最後に光を見ていく気分になる。登場人物たちの日々は、ものすごい濃さで過ぎていく。その濃度とスピード感はそのままに、最後は泥沼に光が射す感覚があった。果たして最後の展開が展望ある未来なのかと言われればそうでもないだろう。特殊で特別なことがおきるけれど、それすらも人間の社会の中でこそ特殊なだけで、なんだかとてもとても凡庸な感じがする。起きる全てに意味がなく、通り過ぎていくもの、という感覚になった。

仏教への興味がますます湧いた。

ヒトでなし: 金剛界の章 (新潮文庫)

ヒトでなし: 金剛界の章 (新潮文庫)