ニューヨーク洗濯事情(後半)
(前半はこちら)
ここハーレムの暮らしで洗濯に行くときは、大きなカートにイケアのファスナーバッグいっぱいの洗濯物と洗剤を突っ込み、バッグの中には専用のプリペイドカードと、キンドルか文庫本、携帯用消毒液を入れていく。犬の糞を踏まないように気をつけながら、グラフィティを眺めつつガタガタの歩道で行く。
1.99ドルの一番小さな洗濯機を2台使うのが私のお決まりで、大きい洗濯機を使うより安いし、量も丁度いい。日本から持ってきた洗濯ネットに下着や布の柔らかな物を入れ、台荷足をかけ1段登り洗剤を入れ、防音室ほどに重い扉を閉める。4種類しかないコースから洗濯物の汚れ具合や布の種類を考慮してひとつを選ぶ。プリペイドカードを差し込み、表示が「BUSY」になったら引き抜く。ガチンと骨太な機械音がして注水が始まる。一度手を消毒して、ここからは20分ほどの待ち時間。ベンチに座ってテレビを見たり、本を読んだりする。合間に買い物や少しの散歩に出ることもある。洗濯をする人は様々で、その人達の暮らしの奥を想像する。山のようなジーンズ、砂漠とオアシスの香りのする民族衣装、ぬいぐるみに枕。
ほとんどの人が乾燥機を使い洗濯物を乾かす。だからか、その場で着ていたTシャツを脱いで洗う人もいる。洗いたてのシャツを着て帰るから何も問題ないんだろう。
洗濯が終わると、バッグに詰めて家に帰り、リビングに部屋干しする。扇風機を当てていれば季節を問わず、数時間で乾く。どれだけ洗濯者同士が触れ合っていようとも生乾きなどもない。分厚いバスタオルも、ジーンズも大丈夫。クラシック・ランドリーで7分毎に止まる超強力乾燥機を待ち続けるよりもいい。何より、洗濯物干し、取り込み、という家事をやりたい。
禅僧の作務や瞑想のように作業することもあるが、大抵はラジオを聞く。イヤフォンをアピールするために耳に髪の毛をかける。日本語のラジオを存分に聞いてひとり笑う。物干しラックの限られたスペースに、パズルのように工夫して乾きやすいように考えて配置するのが楽しい。最後に扇風機を風の回りが良いように設置して終わり。翌日また、ラジオを聞きながら畳み、箪笥やクローゼットにしまっていく。
こんな1週間ほどに1度しかない家事をとても楽しみにしている。もう少しやりたいなとも思うが、回数を増やすのは不経済だし、環境に悪いので仕方ない。
(965文字/40分/10日目)
イケアで物買うのがどうかっていう話はあるけど、勝手はいいです。
洗濯洗剤はミセスマイヤーズ。控えめな香りがいい。