拾いものエンパワメント

ニューヨークの街角のそこかしこには家具が捨てられている。家具もほかのゴミと同様に捨てることができるのだ。いつものゴミ収集車が可燃ゴミと一緒に回収する。日本のようにコンビニで粗大ゴミ回収券を買って、指定された日に指定された場所に捨てる必要はない。逆に言えば、粗大ゴミは勝手に持って行き放題だ。

マットレス、ベッドフレーム、ソファなどを一番よく見かける。十分使えそうなものも沢山ある。こちらの家具は大きいから、持っていくのも一苦労だけれど、もったいないなともいつも思う。

 

先日、イーストビレッジに行った際、帰り際に小さな棚をパートナーが見つけた。3段の白い横板と、真鍮風の落ち着いた金属の柱でできている。壊れていないばかりか状態がいい。棚の高さはちょうど文庫本サイズで、書棚が足りなくなっていたところだったのでめっけ物だった。イーストビレッジからハーレムまでは、小一時間ほどかかり、地下鉄の乗り換えもある。荷物を手分けしてふたりで持って帰った。

棚をむき出しで持っていても、ジロジロ見られないニューヨークが好き。

 

翌日、棚を拭き、アルコール消毒した。真鍮の古色感がかわいい。壁面に固定するための釘が残っていたり、ネジが歪んでいたので、電動ドライバー、スクレパー、大きいハサミを持ってきて、板をつけ直したり、釘を外したりした。床に座り込み、久々の道具類に気をつけて、少しずつ作業した。

 

物はできるだけ修理して使いたいと思っている。友人の言葉を思い出す。

「自分で作り出せないものは無駄遣いしない」

繕い物は割と得意で、リメイクしたり、作ろったりしてどれも長いこと着ている。布巾なんかもあて布をして、延命治療をする。着れなくなったり、使いにくくなってたりしたものが蘇るのはとても嬉しい。

こういった作業や家事も性的役割分担が残っている。私が中学生のときは、家庭科(料理、裁縫、洗濯)は女子、技術(木工、電子工作)は男子と授業が別れていた。

家具や機械類の修理は苦手意識があったが、ひとりでやってみたら意外とできた。テレビドラマ「Brooklyn 99」のエイミーがひとりで自動車のタイヤ交換をして「女もなんだってできる!なによりタイヤ交換はエンパワメントされる!」と誇らしげにしていたシーンを思い出す。同じ気分です。

 

この日を機に、ドアやラックのネジ締めなども自分でするようになった。

肉体を伴って、エンパワメントされるのは本当にいい。

 

(994文字/34日目/60分)

 

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意外と文庫本持っていなかった。