ニューヨーク・ワクチン接種物語1

ニューヨーク州では2021年3月29日に行政発表があり、3月30日から30歳以上がコロナワクチンの接種対象となった。以前の情報では、医療従事者や高齢者を優先にワクチン接種をスタートさせ、30歳以上に順番回ってくるのは5月になると言われていた。随分な前倒しだ。追って4月6日には、16歳以上に対象年齢が引き下げられた。

少し遡って3月初旬か中頃だったか、対面授業を受け持つ各種教員へのワクチン接種が始まった。パートナーも職種的に対象となったが、今学期の授業やオフィスアワーはオンラインですべて実施していたので、もっと優先すべき立場の人がいると遠慮していた。

こんな話をしていたのが、もう冬は終わったと、厚手のジャケットのまま外でたむろする人が増えるハーレムの街角が教えてくれていた頃だった。

死を意識せざるを得ないニューヨークで生き、私はパートナーがワクチン接種の権利があると知ると身体の中が広がる思い気がして、気が急いて私は「次学期に備えて打ったらいいじゃない」と提案した。それでも「自分より必要な状況にある人がいるはず」と冷静に考えるパートナーの意見にヒューマニティーを見出し、素晴らしい人だと思った。

このときは、こんなに早く自分たちの順番(30歳以上)が回ってくるとは思いもしなかった。

 

30歳以上を対象にしたワクチン接種が始まって、すぐ行動を起こした友人Aさんは1時間ほど予約サイトをリロードし続け、ようやく予約を取れたという。この話を聞き、もうしばらく後でいいかと思った。彼は友人のなかでも一番厳重にコロナ対策をしていた人だ。

4月4日の日曜日、友人Bさんと1年以上ぶりに再会した。パートナーと私を引き合わせてくれたこの友人は、ニューヨークがロックダウンになったその日に日本から米国に帰国したと言う。友人はワクチン接種を済ませたと言い、久方ぶりに他者とハグで挨拶した。ワクチン接種も再会もハグも嬉しかった。

友人に聞けば、便利なツイッターアカウントがあって、予約空き枠がでるとツイートで通知してくれるのだそうだ。早速登録した。その日の夕方、Bさんと別れ、ギリシャ・スタイルのカフェでパートナーとふたり、外席でお茶をしていると、ツイッターがピロンと鳴った。

ワクチンの通知だ!

ふたりでめちゃくちゃに焦った。早くしないと!チャンスだ!

1時間リロードし続けたAさんの顔が思い浮かぶ。

登録作業!

こういうことは母語でないと途端にハードルがあがる。

英語で個人情報を一通り聞かれる。

ちょっとした英語を読むのに母語の数倍かかることもある。

アレルギーや持病などに関する小難しいことも聞かれたかもしれない。

英語を自力で読むより、パートナーの後をついて解説してもらいながら登録したほうが早いと判断し、そうした。だから、何を登録したか何も覚えていない。

あっという間に、だが体感的には長時間を費やし、翌日の4月5日に予約が取れた。会場はブロンクス。やりました。

ニューヨーク・ワクチン接種物語2へつづく

(41日目/1時間/1204文字)

 

これがワクチン予約に便利なツイッターアカウントです。

twitter.com

 

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友人Bとはコロンビア大学で待ち合わせ。学生たちが日向ぼっこしてるのが大変良い。