1年経ちました(2020年渡米の思い出)

日本時間の2020年1月14日、両親に見送られながら羽田空港を飛び立ち、同14日、私はニューヨークに降り立った。多くの人が行列する入国審査場に大荷物で並び(お気に入りの長傘まで持ってきたので大変だった)、空港のWi-Fiを拾って暇を潰した。婚約者ビザでやってきた私は、ひとり別室に呼ばれ入国審査を受けた。体格のいい警備員に囲まれて隅に座っている南米系男性がいて、「まさか私も入国できないのでは」とハラハラした。10ヶ月はかかって用意したビザ関連書類全てとパスポートを、見上げる高さのカウンターにいる入国審査官に預けたら、ものの数分で審査完了。たどり着けばあっさりしていた。拍子抜けと、安堵が一緒にきた。パスポートにザザザっと日付や番号を書かれ、ドンッとスタンプを押されゲートを抜けた。

 

羽田空港のカウンターでも、グランドスタッフ2人がかりでビザ関連書類を全てひっくり返して確認しなければならず、本当に心臓に悪かった。

初めは普通に受付したが、ある特別な事項を確認しなければならず、婚約者ビザは珍しいようで、初めはひとりで対応してくれていたスタッフさんがもうひとり先輩と思しき人に応援を頼んだ。グランドスタッフの確認事項マニュアルを初めて見たし、スタッフさんもマニュアルを何度も確認していた。初見の人が分厚いビザ書類を確認することは時間がかかりすぎるだろうと判断し、確認事項を私が書類群から検索して提示した。実質3人がかりだった。うっすら汗ばんだ。確認が終わった時、3人に連帯感があり、笑いあったほどだった。「ご結婚おめでとうございます」と送り出されたのは、思い起こせば嬉しい。当時はもう少し複雑な気持ちだった。

そもそもビザの手続き注意事項には、出入国する空港で書類が必要とは書いてなかった。厚さ2センチほどのファイル2つ分の書類は重たく、スーツケースに詰めたいという気持ちを抑え、用心深く手荷物にしていたのが功を奏した。

 

出国、入国の日だけでもブログがいくつか書けるほど沢山の思い出がある。

 

ゲートを抜け、荷物を取り外に出るとパートナーがいて、思い出しても泣けてしまうほど嬉しかった。2019年の夏、私の婚約者ビザが降りていない状態でパートナーは日本から米国に戻らなければならなかった。トランプ政権下、ビザが下りるか気が気でない状態で東京に暮らした数ヶ月は辛い気持ちにならないように必死で過ごしていた。ルームメイト、友達、高円寺のお店とマスターたちにお客さんたち、ジムと岩盤浴、瞑想、いろんなことに助けてもらってようやく過ごした。

 

パートナーはウーバーを頼んだ。めちゃくちゃでかくてかっこいい車が来て、ブラックのドライバーさんは親切にも荷物の積み込みを手伝ってくれた。必死になっても聞き取れない英語を適宜聞き流しながら、2度目のニューヨークを実感した。右手にヤンキー・スタジアムを眺めながら、郊外を進む。今住んでいるハーレムを通り抜け、モーニングサイド・ハイツに到着した。

 

荷物を置いて、遅いランチを食べに出た。タイ料理。

 

渡米前後の自分が知りたくて、日記帳を見返してみたが1月21日までは何も書かれていなかった。心の中の記録は日記帳にあって、楽しい記憶は写真に残っている。

時差ボケでクラクラしながら、その日の夜を過ごしたんだろう。写真を見返すと、出国前に友人たちがくれたお菓子が広げられていて、それも少し食べたのかもしれない。荷物が多い中、甘党のパートナーと一緒に食べたいと思って、割れないように気をつけてスーツケースに詰めたものだ。うさぎ型でおなじみのサパ子さんクッキー、ぽれやぁれのお持ち帰りのクッキー(お茶しに行ったらゆみさんがその場でくれた)、澤田先生にもらった冨貴寄(帰ったら絶対買う)などなど。そのお菓子たちは大事に少しずつ食べました。ありがとう。

 

引き続き写真によると翌日は、時差ボケ対策も兼ねて、結婚祝いをくれた日本の親類や友人に向けたお祝い返しを買いに行っている。カードを奮発してパピルスで買って、場違いすぎるザ・プラザ・ホテルの地下でクスミティーを買った。パートナーはフローズン・ヨーグルトを見つけて嬉しそうに食べてた。良かったなあと思う。

ニューヨークの物価に慣れていない私は、せっかく見かけたデビッド・チャンのレストラン「モモフク」の値段にビビって踵を返してしまった。またいつか行きたい。(デビッド・チャンの「アグリー・デリシャス」という番組が好き。おすすめ)あと、あの時見つけた死者の日ドクロ柄のワンピースは今でも買っておけば良かったなあと思っている。

もちろんまだマスク無しで出かけることができた。

思い起こせば、きりがない思い出が出てくる出てくる。

 

私の人生は、毎年毎年大冒険だが、2020年も大冒険の年だった。

去年の今日の私と、今日の私を見ると、隔世の感さえある。

特に精神面での成長の多い年だった。

 

思いがけないことが起きるから、人生は楽しい。過ぎてしまったから言えるけれど、自死も含め、どこかのタイミングで死ななくて本当に良かった。そして、このように折に触れて、友達や家族やパートナーにありがとうと伝えたくなることそのものに、人生の喜びを感じる。

いやあ、幸せなこってす。

どうもありがとう。これからもよろしくおねがいします。愛してるよ。

 

(2150文字/1時間40分/18日目)

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