ECD『暮らしの手帖』

ECDが亡くなった時以来かな。久しぶりに手にとった『暮らしの手帖』ECD著。

なんとなく熱があって布団にいる以外何もできなかった時に、あの本寝込んだりする描写があるし、なんとなく足元のおぼつかない主人公たちの暮らしが良いんだよなあ、と取り出してきて読んだ。

 

「もういないんだよなあ」と生前の姿を思い浮かべる。はじめに思い浮かぶのは、横顔のライブシーン。マイクを短く持ち、前のめりになって客を煽るような。次は、闘病中の痩せた顔。雑誌『岩波』の少し前までの表紙のようなアップの顔。娘さんたちと外にいる姿。パンツ姿で寝る姿。これらの記憶の多くは植本一子さんや、ろでぃーさんや、いろんな人の写真から生成されてる。

 

文章の中の、主人公たちの綴られ方は、頭の中に響く第三者の声のようだ。自分を少し俯瞰して、語っていく。その語りをそのまま文字起こししたような。誰に聞かせるでもない語りが、日常っぽいなあと思う。

 

私の東京生活において繰り返される引越しの中でもずっと一緒に移動を続けてきた本の中の1冊。もう何年持ってるんだろう。数年前に自分が残したドッグイヤーがいくつかある。罫線は引かないので、どこに感銘を受けたか、いつ読んだ時につけたのか、を思い返すのも楽しい作業だったりする。

 

繰り返し読む数少ない本。

オススメです。

 

暮らしの手帖

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