読書会という夢

パートナーとふたりで読書会をしています。

新型コロナウイルス第一波の震源地だった頃のニューヨーク。自宅隔離政策に従ってアパートメントでこもり、ふたりで過ごす時間をもっと楽しみたいねという話をしていたときに、何をしようかという話のなかでトントンと決まったのが読書会。

わたしは学生だった頃から好きな人と読書会をするという夢があったのですが、まさかこれが叶うとは思っておらず、生き続けてみるもんですねと思いました。そしてこれをパートナーに話したら、全く同じことに憧れ、そしてそれは一生自分に起こらないと諦めていたというので、自分達の幸運としか言えない気持ちを分かち合い、早速読書会をすることを決めました。

漫画なら、向き合い手を取り合って、「わたしも~!」ときゃっきゃと飛び跳ねるあの表現かな。

 

課題本を決める際、折角なので諸々の基本をもう一度押さえたいという話になり、

 

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買った本!


フェミニズム

レイシズム

アイデンティティ

セクシュアリティ

ミシェル・フーコー

 

についてのオックスフォード出版の入門書を買いました。

入門書と言えどもいずれも英語で書かれたものなので、日本語を読むより遥かに時間がかかるため、1冊読み切って読書会だといつになるか分からないので、各自2章分を読んで質問を用意してから、1時間ほど時間を持つというかたちでやってみています。

 

 

なんとなく手始めにフェミニズムから読み始めました。

質問を用意するというのはとても大切なことなのだけれど、学問に対する挫折意識も手伝って苦手意識がある。大学院生時代から自分でそう思っていて、ゼミで戦々恐々としたり、シンポジウムに行ったりしても「何も質問思い浮かばないなあ」と思いながら、質問する人すげえと思ったりしてきました。

読書会直前も、上野千鶴子先生の『情報生産者になる』を読んで、「やっぱりわたしは質問する力が弱いし、学者の道には行けないんだよなあ」と挫折感を深めていたところだったのでちょっと苦しかった。

 

 

情報生産者になる (ちくま新書)

情報生産者になる (ちくま新書)

 

 

 

とは言え、質問は用意してみようと決意。英語読解力の問題もあり自分に課しすぎるとしんどいので、ハードルを下げて文法的に意味が分からなかった部分をいくつかピックアップしておくということで、若干逃げつつ「質問」を用意したのでした。

 

読書会の日。

自分の読解が間違っていないかを確認したかったこともあり、はじめに進んでサマライズをした。パートナーはさすがに面白い質問や指摘をした。現役研究者は違うなあと思った(というか、博士号取得おめでとう!)。それらの質問や指摘に触発されてわたしにも質問が生まれて、質問をした。その質問をパートナーが面白がってくれて、嬉しく、憑き物が落ちたような気分になった。

 

本の1章には、イギリスのキリスト教教会コミュニティから生まれてきたフェミニズムが記されており、全く知らなかったので勉強になった。しかし、何の前提も示さずに「フェミニズムは良いもの」であることや、「男性は教会内で発言する女性に対して悪口を言った」のようなが何度か出てきて、フェミニズムの基礎が分かっている人向けに書かれているように感じ、「基礎を押さえたい」という自分たちにはちょっと合わないと結論づけた。とは言え、当時の女性の動きを伝えた文章は少なかったことも予想されるので、そこから文献を集めまとめたのは凄い仕事だと思うし、当時の女性たちがまともに扱われなくても、文章を書き続けたり発言し続けたりしたことにも勇気づけられた。

最後に、次回からはベル・フックスの『フェミニズムはみんなのもの ~情熱の政治学』を読もうということで初めての読書会は終わった。

 

夢が叶った瞬間だった。

 

ベル・フックスの『フェミニズムはみんなのもの ~情熱の政治学』は、ちょうど8月に日本語訳が再販されたばかり!しかもエトセトラブックスという面白そうな出版社から!

まだ最初のほうしか読んでないけど、良いなと感じている。

この本の中では「男性を敵対視することはフェミニズムの本質ではない」ということが繰り返し言われていること、フェミニズムの中にも社会階層や人種問題が関わっていて自己を振り返る必要を喚起されること、メディアの問題がありフェミニズムが大いに誤解され続けていることなどが多少でも分かりやすい言葉で書かれているからだ。フェミニズムに目覚めた頃に自分が持っていた怒りや、フェミニストから向けられてきた怒りなどから感じている恐怖をほぐし、理解を深めさせてくれていると感じている。

 

フェミニズムはみんなのもの 情熱の政治学

フェミニズムはみんなのもの 情熱の政治学

 

 

 これはまだ予感だけどわたしが感じているように、この本はフェミニストからめっちゃ怒られて怖い思いをした人たち、フェミニズムは必要そうなんだけど…、と怖気づいているような人たち、にもおすすめできるんじゃないかなと感じている。

 

この本を読んでいき、知っているようで知らないフェミニズムについての理解を深めていきたいなと思う。

 

そして少しずつ、この読書会を通して「質問する」ことを練習していきたいなと思う。

自分の思考の癖で、なぜか「何でも(特に苦手意識を持っているものに対して)最初から上手にできなければならない」と思い込んでいて、この「質問をする」もこれにあたる。一方で「コツをつかみ、上手になるまで練習する」という思考も持ち合わせているんだけれど、なぜかこの思考は顔を出さないことが結構ある。

「質問ができなければ恥」という思い込みもあってこれの裏側には、「質問をすることは、先生や大人の言ったことが理解できなかった証拠で自分が悪い」という思い込みが内在している。このような思考の癖の発生原因として、幼い頃から家族や学校で受けてきた刷り込みが深く関係していると思う。小さい子どもなんて、できなくて知らないことだらけなのに(だから世界は楽しいのに)、なんで「できる」前提で大人から接されてたんだろうと思いますね。「質問する」ことの練習を通して、世界に対する安心感と、挑戦することの楽しさ、自分の現在地を楽しむ心を育てていきたいなと思っています。

 

いつも文章が長いし、もっとさらっと書きたいなと思って読書会のことを書き始めたのですが、思いの外まとめるのに苦心しました。たくさん削って、なんなら寝かせもして。読書会というひとつの小さな事柄に、夢、読書、フェミニズム、学問、、、思いもしなかったほどにめっちゃたくさんの大事なことが詰まっていて、改めて自分と出会ったからなのだと思います。

 

次の読書会も楽しみ。

NYのインデペンデント系本屋などで開催されている読書会にも行ってみたいなあという次の夢もできました(そして友達も欲しい)。

 

FEMINISM IS FOR EVERYBODY

FEMINISM IS FOR EVERYBODY

  • 作者:hooks, bell
  • 発売日: 2000/10/20
  • メディア: ペーパーバック